太平燕(タイピーエン)
グローバル化が進む現代だからこそ、根強く愛され続けているのは地元の郷土料理。
ほっとする家庭料理、ならわしとしての食事、季節を感じる食材etc...
各国各地の文化をのぞいて下さい。
太平燕(タイピーエン)
産地:熊本県
材料:春雨、ニンジン、マッシュルーム、イカ、揚げ卵、白菜、たけのこ、ふくろ茸、かまぼこ、香菜、もやし、きくらげ、えび、豚肉、鶏がらスープ、白湯、ごま油、塩コショウ
投稿:熊本営業所 食品部員
日本生まれの中華料理
熊本県のソウルフードである
熊本県では中華料理店以外でも学校給食や家庭の食卓にも登場するソウルフード「太平燕(タイピーエン)」をご存知だろうか。春雨をメインに数種類の野菜・豚肉・海鮮が具材として入り、ブレンドされた鶏ガラと豚骨スープのハーモニーが特徴の熊本県ご当地グルメだ。熊本県内のコンビニでもメニューとして登場する程、地域に定着している料理である。
この太平燕の誕生の歴史を知るには、まず中国の太平燕について知る必要がある。中国の福建省では太平燕というアヒルの卵が入ったワンタンスープのような料理がある。福州語でアヒルの卵という意味である「鴨卵(アッロウン)」は、戦乱を鎮めるという意味の「圧乱」と同音であることから、戦乱が静まれば天下太平という意味の「太平(タイビン)」と言い換えられた。また福州市には「扁肉燕(ビェンニュッイェン)」という豚肉を叩き潰してサツマイモでん粉と一緒に練り込んだワンタン用の皮のことを「燕」という。この2つの素材を組み合わせて作られたのが「太平燕」であり、台湾などでも宴会の席で提供されることがある。
これの太平燕が日本にいつどのように伝わり、熊本のソウルフードとして根付いたのだろうか。それは明治時代に華僑(外国に移住した中国人)が日本で中華料理店を営み、まかないとして「太平燕」を作ったことが始まりだと言われている。しかし当時の日本ではアヒルの卵は入手困難であったため揚げたニワトリの卵が使用され、さらに扁肉燕の代わりに春雨を用いた。このアレンジによって中国ではスープ料理であった太平燕が日本では麺料理へと変化したのだ。つまり元々太平燕は中国の料理だが、熊本で食べられている「太平燕」は日本生まれの中華料理なのである。
鍋に少量の油をひき、豚肉・白菜・もやしの順に炒めた後、鶏がらスープを加えて1分程度煮る。そしてエビとイカを加え、さっと煮たら取り出す。さらに先ほど煮たエビとイカと一緒にかまぼこ・揚げ卵以外の食材と白湯を加え1分程煮たら塩コショウで味を調える。煮た具材をお皿に移し、ごま油をたらしたら完成。
東京で食す機会はまだ少ないが、インスタント太平燕がネットや熊本県のアンテナショップで販売されている。
太平燕はヘルシーで低カロリーな春雨の麺が入っている
かつて入手困難なアヒルの卵の代わりに揚げた鶏卵が使用された
鶏ガラと豚骨スープがブレンドされたコクがあるのにあっさりしたスープ