へぎそば
グローバル化が進む現代だからこそ、根強く愛され続けているのは地元の郷土料理。
ほっとする家庭料理、ならわしとしての食事、季節を感じる食材etc...
各国各地の文化をのぞいて下さい。
へぎそば
産地:新潟県
材料:蕎麦、布海苔
投稿:新潟営業所 食品部員
新潟魚沼地方発祥のへぎそば
強いコシと歯ごたえが特徴
新潟の名物である蕎麦といえば、喉ごしが良く歯ごたえがある「へぎそば」が有名である。新潟県では古くから魚沼地方を中心に蕎麦の栽培が行われ、かつては農家が自家用に作った蕎麦を石臼で挽き、つなぎに工夫を凝らして各家庭の味を自慢し合っていたという歴史がある。へぎそばはそんな新潟の文化から生まれた伝統的な料理である。
へぎそばには大きな特徴が3つある。まず1つに名前の由来にもなっている「へぎ」に蕎麦がのっていることが挙げられる。「へぎ」とは元来「剥ぐ」の訛りで、幅30センチ長さ50センチ程の木を剥いだ板を折敷にした器のことである。新潟ではその大きなへぎに蕎麦がのせられ、正月や・お盆・冠婚葬祭の際に大勢の人で蕎麦を囲むのが一般的である。
2つ目の特徴はつなぎに「布海苔」を使用しているという点である。もともと布海苔は織物の産地として有名であった魚沼地方で、織物の緯糸を張らせるための糊として使用されており、容易に手に入る材料であった。魚沼地方では小麦の栽培が行われておらず、蕎麦のつなぎとして山ごぼうの葉や自然薯などを使用していたが、手に入れやすい布海苔が江戸時代に着目され、つなぎとして蕎麦にも使用されるようになった。布海苔をつなぎにすることによって、蕎麦に独特の喉ごしと噛みごたえがある食感が生まれる。
3つ目は「手繰り」された蕎麦であること。冷やした蕎麦をただ器に盛るのではなく、ひと口程度に丸めてからへぎの上に並べる作業を手繰りという。この盛り方は織物の産地である魚沼地方ならではの盛り方で、糸をより紡ぐときの手法が活かされている。手繰りをするには通常の蕎麦では難しく、布海苔をつなぎとして使用したコシが強い蕎麦でないと上手く手繰りができないと言われている。
ところで蕎麦と一緒に食す薬味としてワサビが一般的だが、魚沼地方ではワサビが採れなかったことからカラシが多用されていた。つゆには入れず、少量をそばに塗るようにして食すと、さっぱりとした辛さが楽しめる。
魚沼地方の織物文化と蕎麦の文化が融合してできたへぎそば。東京の蕎麦と食べ比べて違いを楽しんでほしい。
手繰りされた蕎麦
1人前がとりやすくなっている
乾燥させた布海苔
銅鍋で煮て溶かすと深い緑色になる
へぎそばに欠かせないへぎ
新潟では大勢でへぎそばを囲む