にしんそば
グローバル化が進む現代だからこそ、根強く愛され続けているのは地元の郷土料理。
ほっとする家庭料理、ならわしとしての食事、季節を感じる食材etc...
各国各地の文化をのぞいて下さい。
にしんそば
産地:京都府
材料:身欠きにしん、蕎麦、九条ネギ、お出汁
投稿:大阪食品部員
京都発祥の「にしんそば」
甘辛く炊いたにしんが京風のお出汁にマッチする
京都が発祥の「にしんそば」。その名の通り、かけそばに甘辛く炊いた身欠きにしんの甘露煮をのせ、お好みで刻んだ九条ネギをかける京都の伝統料理である。「身欠きにしん」はにしんのさばき方に由来する名前で、以前はにしんの腹側(内臓など)を切り落とし乾燥させて商品にしていたことから、身を欠いたにしん=「身欠きにしん」という名前になった。身欠きにしんを米のとぎ汁で2日間ほど漬けてやわらかくし、醤油・砂糖・みりんなどで甘辛く煮る「棒煮」という方法で作ったにしんの甘露煮を京都ならではの上品な蕎麦のお出汁にのせることで、にしんの油が出汁に溶け出し独特の深いコクが生まれ、甘辛いにしんの身が淡白な味わいの蕎麦とよく合い、上品且つ味わい深い蕎麦となっている。
にしんそばの発祥は京都の「松葉」というお店。1861年創業の芝居茶屋であったが、1882年に2代目松野与三吉氏が当時の京都の人々に貴重なタンパク源として親しまれていた身欠きにしんと蕎麦を合わせることを考案し、「にしんそば」が誕生した。考案されたにしんそばは地元の人々に好評を得て、京都を代表する食べ物となった。今では年越しの定番蕎麦としても広く親しまれている。
ところで、山に囲まれている京都でなぜ魚を使用したにしんそばが伝統料理になったか疑問に思われるかもしれないが、その答えは京都の食文化に答えがある。当時の京都では輸送手段が発達していなかったため新鮮な海産物は輸送されず、干魚などの加工品が多く流通しており、海産物は貴重な食材であった。にしんは元々北海道で多く獲れる魚で、獲れたにしんを身欠きにしんにし、京都に輸送されていたことが京都でにしんが食べられるきっかけとなった。つまり身欠きにしんは北海道にもあり、甘露煮にした身欠きにしんをそばにのせた「にしんそば」は同じく北海道にも存在する。しかし北海道のにしんそばは、関東風の濃いお出汁ににしんをトッピングしているため、京都のにしんそばとは別物として認識されている。
基本はかけそばだが、冷やしたお出汁のにしんそばも夏にはぴったりだ。京都に行った際はぜひ食べてほしい。
夏は冷たいお出汁で食べるにしんそばも良い
身欠きにしんの甘露煮単体で販売もされている
京都老舗の一味唐辛子がトッピングとして置かれている