くるみ餅
グローバル化が進む現代だからこそ、根強く愛され続けているのは地元の郷土料理。
ほっとする家庭料理、ならわしとしての食事、季節を感じる食材etc...
各国各地の文化をのぞいて下さい。
くるみ餅
産地:大阪府 堺市
材料:餡、餅(または白玉)
投稿:大阪食品部員
堺市発祥のくるみ餅 豆の穏やかな甘みが特徴
黄緑色の枝豆餡が爽やかな印象を与える大阪 堺市の銘菓「くるみ餅」。一口大の餅に餡が和えられており、餡の穏やかな甘みと味噌のように滑らかな口当たりが特徴の伝統的な和菓子である。
名前の由来は胡桃ではなく、あんこでくるんだ餅という意味で「くるみ餅」。大阪府の南河内、泉州、泉南地域では秋祭りのご馳走として、来年の豊作を願うために食された。餡は店舗によって置いているものが異なるが、基本的に黄緑の枝豆餡と茶色の大豆餡の2種類が存在する。そしてくるみ餅は別名で「畦餅(あぜもち)」と呼ばれることがある。それは水田の畦に大豆を蒔いて根を張らせ、地固めをしたことから大豆が畦豆とも呼ばれるからだ。くるみ餅の餡が2種類あるのは、畦に蒔いた大豆をいつ収穫するかの違いに起因したのかも知れない。
くるみ餅の歴史は安土桃山時代に遡る。堺市は鎌倉時代に漁港として発達し、西日本の海運の拠点として発展。戦国時代になると対明貿易や南蛮貿易などで海外との交流が増え、貿易港として黄金時代を迎えた。その貿易により有力商人をはじめとする町衆や武将の間で、茶の湯を嗜む「喫茶文化」が広がった。茶請け用の菓子作りも盛んとなり、くるみ餅もその1つとして嗜まれていた。そして堺市はわび茶を完成させたことで有名な千利休(1522-1591)の故郷でもあることから、堺市には茶の湯文化が根付いており、多くの和菓子の老舗店が軒を連ねている。そんな老舗店の1つであるくるみ餅の名店「かん袋」は古きよき文化を多くの人に発信する拠点として現在も行列が絶えない。
くるみ餅の名店「かん袋」では通常のくるみ餅の他に、かき氷のように削った氷をのせた「氷くるみ餅」というメニューも人気だ。餡が絶妙に氷と混ざり合い、甘さが苦手な人にもお勧めしたい一品である。
長い歴史の中で生まれたくるみ餅、堺市に立ち寄った際は堪能してみてはいかがだろうか。
餡の中に練られた白玉が程入っている
枝豆餡のほかに大豆餡もある
とある堺の店舗ではくるみ餅の他にも喫茶文化で生まれた特色豊かな和菓子が並ぶ