DOP(原産地呼称保護制度)とは?(2)
今宵も奥深く濃密なチーズの世界へ、ようこそお越しくださいました。
この時間は、普段聞きたいけど聞けないチーズの素朴な疑問をわたくし、DJゴーダが丁寧にご説明いたします。
本日もチーズラヴァーの皆さんよりたくさんのお便りを頂いております…。
それでは早速、本日のお題に参りましょう。
DOP(原産地呼称保護制度)とは?(2)
ラジオネーム "1日3軒スーパーを巡る主婦さん" さんからのお便りです。
「DJゴーダさん、こんばんは。スーパーで売っているイタリア産チーズのパッケージに赤いマークが付いているのが気になったのですが、これは何のマークでしょうか? 教えていただけると幸いです。」
さて前回は、チーズの品質保証制度…とりわけ「DOP(原産地呼称保護制度)」についてお話しました。特定の地域で定められた製造方法によって製造され、その製品が土地の気候風土を反映した風味や品質であると認められたものだけが「DOPマーク」を製品に付けることが許されている、というお話しもしましたね!
ところで、“土地の気候風土を反映した風味や品質である”チーズって具体的にどういうことなの?と皆さん思いませんか?
ラジオの向こうで「うんうん、そう思う」と頷く皆さんの様子が見えますよ!
確かにDOPに認定されていることで、歴史あるご当地チーズであることがわかり、チーズを買うときの一つの基準になりますよね。
でも、どのような土地でどのような気候風土を反映したチーズなのかを知っていると、チーズを選ぶのがもっともっと楽しくなります。
ということで今回はイタリアを代表するチーズの王様「パルミジャーノ・レッジャーノ」を例に、チーズがどのように土地の気候風土を反映しているか、またパルミジャーノ・レッジャーノと名乗るためにどのような厳しい基準をクリアしなければならないのかをご紹介したいと思います!
イタリアチーズの王様“パルミジャーノ・レッジャーノ”
さて、チーズ界の重鎮であるパルミジャーノ・レッジャーノの登場です!
仕事柄いろんなチーズを食べる機会がありますが、パルミジャーノ・レッジャーノはいつ食べても「やっぱり美味しいなぁ…」と改めて美味しさを嚙み締めてしまいます。
そんなパルミジャーノ・レッジャーノがDOPとして認定されている理由を追求していきましょう!
【1】生産地
パルミジャーノ・レッジャーノは北イタリアで生産されていますが、その中でも地域が細かく限定されています。まずエミリア・ロマーニャ州にあるパルマ県、レッジョ・エミリア県、モデナ県、ボローニャ県のレノ川左岸地域。そしてロンバルディア州にあるマトンバ県のポー川右岸地域になります。
なぜこのように細かく地域が限定されているのかというと、それはこれらの土地にパルミジャーノ・レッジャーノを作るために必要な気候や土壌が整っているからなんですね。
ちなみにパルミジャーノ・レッジャーノに使用される牛乳は先程お伝えした限定地区で育った乳牛のものに限定されています。さらにその乳牛が食べる餌に関しては配合飼料や発酵飼料の使用は一切禁じられ、与えられる干し草は少なくとも75%以上は限定地区で採れた牧草を乾燥させたものにしなければなりません。
牛がのびのびと育てば、餌なんて何でもいいんじゃないの、と思いましたか? 私も厳しすぎる…と初めは感じましたが、これも古くから受け継がれてきた味を守るためなんですねえ。
先程“豊かな土壌が整っている”とお話しましたが、この地域の土壌にはパルミジャーノ・レッジャーノを作る上で必要不可欠な微生物がいるんだそうです。その土壌に生えた牧草を食べた牛たちのミルクを使うことで、9世紀の間変わらない美味しさを守ってきた、ということです。
【2】原材料
そして原材料は非常にシンプル!
新鮮な牛乳・塩・天然の凝乳酵素のみで作られ、添加物や保存料は一切使用されません。
原材料に関してはこれ以上言うことがありませんね。つまりシンプルということです!
【3】製造方法
最後に製造方法について。こちらもかなり細かく定められていますよ~。
説明がなかなか口頭だと難しいので詳しくはお話しませんが、まず皆さんに知ってほしいのはパルミジャーノ・レッジャーノって毎日熟練の職人さんが手づくりで作っているんです!
世界中で愛されているチーズがイタリアの限られた地区で手づくりされているって単純にすごいことだと思いませんか?
そして製造の肝といっても良い「熟成工程」。大きな大きな熟成庫でブラシ掛けをしながら通常24ヶ月間(少なくとも限定地区で最低12ヶ月)の熟成をします。
この長い熟成期間がパルミジャーノ・レッジャーノの旨味にすごく影響します。チーズに含まれるタンパク質がアミノ酸に分解され、あのシャリシャリとした独特な食感と奥深い芳醇な香りが生まれるんですね。
最後に待ち受けるのが厳しい品質検査。専門の検査官が熟成12ヶ月のチーズ一つ一つに審査を行います。
トンカチのような器具でチーズの表面を叩き、その反響音や手に伝わる振動でチーズに空洞や割れなどが発生していないか確認します。これこそ、まさに神業ですね!!
そして合格したものだけに本物の証として「パルミジャーノ・レッジャーノ チーズ保護協会」という焼印が押され、晴れてパルミジャーノ・レッジャーノと名乗れるようになります。
さて、いかがだったでしょうか。
パルミジャーノ・レッジャーノは北イタリアのさらに限られた区域の風土を反映しているチーズで、厳しい基準をクリアし古くからの味を守っているということがお分かりいただけましたでしょうか?
これからもこの味、そして伝統製法を守っていく必要があるからこそ「DOP(原産地呼称保護制度)」に認定されているんですね~!
うーーん、奥が深すぎる!! 私もいつの日かパルミジャーノ・レッジャーノの製造現場を見てみたいものです。
それでは今週のチーズFMはこの辺で! See you again!